日馬富士暴行事件について。マスコミや読者の品格についても考えた
●まさかの日馬富士暴行事件
九州場所2日目を終えて「あらら日馬富士二連敗か、調子悪いのかしら」と思っていた矢先、まさかの暴行疑惑。何かの間違いだと思いたいという願いは届かず、本人も暴行に関しては認め、謝罪をした。
私は彼氏に連れられ相撲を観戦するようになって、はじめて好きになった力士は日馬富士だった。理由は簡単で生で見たらかっこよかったから。運よく溜り席で観戦したとき、生で見た彼のオーラというか、気迫というか、もう本当にビシビシ伝わってきて、男は顔じゃないな(失礼なんだけどほめてる)!と思い、それからファンになった。
ファンは知っていると思うけど、土俵際で優しさを見せる姿も好きだったし、場所の逆転優勝にも感動した。最初は彼氏に付き合って相撲を見ていた私が、日馬富士の相撲がきっかけでどんどんお相撲が好きになっちゃう、と思っていたところだった。
なので、今回の報道には結構なショックを受け、この3日間、事件のことが頭から離れない。日馬富士、なぜ!?ってか、酒癖悪かったのか、と。
多くの報道や発言が飛び交う中で、ショックと同時に、さまざまなことが頭をよぎった。人間本当に好き勝手な生き物だなーとか、マスコミの在り方、暴力について、モンゴル人力士たちの胸中について、などだ。
●「ビール瓶で殴ってない」発言を信じるワケ
ただ、ここにきて、白鵬と日馬富士の「ビール瓶で殴打はしていない」発言がニュースに。白鵬がかばっている可能性もゼロどはいえないが、わたしは、これに関しては本当なんじゃないかと思う。
まず「ビール瓶で殴打」と貴ノ岩の巡業中の画像や状態(暴行事件後、普通に稽古していた)に違和感を覚えた。
ビール瓶で殴られたりなんかしたら、もっと傷だらけになったりするもんじゃないのか?殴打された後は見られるが、傷は見たところ目の上あたりだけだしおかしいなと思っていた。もっとざっくりどこか切れたりしてもおかしくないのに。
さらにスポニチによれば、日馬富士はビール瓶で殴打した後に、馬乗りになって何十発も殴ったという。これにも疑問を感じた。ビール瓶てわったことないけど、そうとう衝撃もあるし音だってあるし、そんなことしたら、まわりにいる力士たちは、一発で速攻、止めるに入るのではないか?何十発も殴る前に。
あと、ビール瓶割れるって、相当な音もしそうだし、個室であっても店の人とか何事だ?と駆け付けたりしそうな気もするし……。そして一般人の前で、馬乗りになって何十発も殴り続けるとか、そこまでやる、というかやりたくてもできるのだろうか?(二次会はクラブという説も。だったらなおさらなくないか?)
旭鷲山氏が同席した力士にビール瓶で1回殴ったと聞いたというニュースもあるが、旭鷲山氏は現場に居合わせたわけではないので、どちらかといえば白鵬の発言の方が信ぴょう性が高い。
あと、最後の理由は、酒癖が悪いとはいえ、ふだん優しい一面を見せたり力士として精進する姿を見せる日馬富士が、そこまでするだろうか?これはファンであるわたしのひいき目が入っているかもしれないけど
●マスコミって何だろう!?
↑スポニチのニュース記事
「ビール瓶で殴打はしていない」という説に関しては、白鵬がかばっているのでは?協会ぐるみで隠ぺい?というコメントも見られるし、わたしもその可能性がゼロとは言い切れない。
でも白鵬や日馬富士が言っていることが本当で「ビール瓶で殴打していない」のだったら、スポニチの報道を鵜呑みして、他のマスコミが一斉に流した”二次ニュース”(すべてではないかもだけど)ってゴミじゃん、と思えてしまう。
とくにWEBではあっという間に広がり、テレビでも即「ビール瓶で殴打」を前提に「暴行だ!犯罪だ!警察は何をしているんだ」というようなコメントや空気が蔓延、あっという間に日馬富士が超極悪人になってしまった(ビール瓶じゃなくても悪い悪いけど)。
今回の事件と少し話はずれるが、マスコミの端っこで働いているので、過激なタイトルであおりたくなるのも、スピード重視で報道しないといけないのもわかる。でもやっぱり、今回の件だけでなく、それで被害を被る人も何人もいるだろうし、もう本当、あおり系タイトル、裏がとれていないニュースをこぞって流すのはどうなんだろう、と思ってしまったし、読む側も、記事を鵜呑みしたり、衝撃的なタイトルやニュースばかり追いかけてはいけないと自戒の念も含めて思った。
↓こういうタイトルも誠に遺憾。
まだ真相もわかってないのに、「全真相」とか。適当過ぎる。
●処々で暴力に対する認知の甘さが露呈している
こんなふうにマスコミの報道の仕方を見ると、朝青龍が、ツイッターで日馬富士だけ悪者にするなとマスコミに対して怒りを露わにしていた気持ちもわかる。
日馬富士だけ悪とう書くマスコミに気食わない‼️
— Asashoryu 第68代横綱朝青龍 (@Asashoryu) November 16, 2017
内容悪方にさす日本のメディア‼️本当の事聞きたくない日本のメディアたち⁉️
— Asashoryu 第68代横綱朝青龍 (@Asashoryu) November 16, 2017
ただし、朝青龍は貴ノ岩だって悪いとうような投稿も目立ち、そこは別の意味で無視できない。貴ノ岩だって悪いんだから、手を出した日馬富士だけが悪いわけじゃないという含みがあるようなのだが、一般的に考えれば、正当防衛を除いて素手で殴っていたとしたってやっぱり手をだしたほうが断然悪いと思う。
だからこの貴ノ岩だって悪いというのは、相撲界での暴力に対する認識の甘さがにじみ出ているのでは?と感じる。
同じことは、日馬富士の幼馴染の女性のコメントにも表れていて「日馬富士が殴るなんてよっぽど理由があったはず」とかばう発言をしているが、理由がなんであれ、殴ったほうが悪いのだ。
これらの発言や、貴ノ岩が翌日以降何もなかったかのように稽古に出ている様子からしても、日馬富士や力士たちやその周辺の人たちの暴力に対する認識が、相撲界という独特の世界、もしかすると、国籍が違うことによる文化背景などもあり、一般の人々ズレていることがうかがえる。ま、なんらかの圧力により排除できないということもあるのかもしれないけど。
もちろん、稽古中に気合をいれるために多少手が加わることはあるだろうし、悪とはいえないのだが、土俵以外でも多少、ではすまないことが(日馬富士だけでなく)少なくなさそうだ。
おそらく、ここが1番難しいのだと思うけど、この「暴力に対する認識のズレ」を力士や相撲協会は気が付かなければいけないんじゃないかと思う。
●相撲界は力士ではなく、”人”を育てているということをもっと自覚してほしい
今回、思ったより少なくてホッとしたのが「これだからモンゴル出身は」というコメント。過去に暴力沙汰がきっかけで引退した朝青龍の件もあり、こんな発言がでてきたらやだなぁと思っていたのだ。まぁ、でもちょっとはやっぱりあったけどね。日本人力士だけでいい、とか、そういうの。
でも、長らく日本人横綱がいなくて、モンゴル出身の力士たちが日本の相撲界を支えているのはゆるぎない事実である。
しかもさ、モンゴルから日本にやってきて相撲部屋に入るのってほとんど未成年からでしょ?相撲会、相撲部屋って、濃密度でいったらもうそりゃ家族のようなものでしょ。それって半分日本人が育ててることじゃないか。
そこでもしも、暴力が日常なのであったら、どのように育つだろうか。もちろん、皆が暴力をふるっているとはいえないし、それを見て育つ側にも個人差はあると思うけど、要は、相撲協会や親方たちは親が子どもを育てるつもりで道徳心までしっかり教えていかなくてはいけない、と肝に銘じておかなくてはいけないのだ。もちろん、それは力士の国籍関係なく。
まぁこれはそのあたりの自覚がもともと相撲協会には足りない(というか、もっとやばい暴力沙汰があったのだから、足りないというか無かった?)からいつまでたってもこのような事件が起きるのではないだろうか。かばうわけでなく、たぶん、日馬富士だけの問題ではないと思う。
●ネットやテレビでの軽率なコメントにもイラっとした
でも、本当、マスコミの報道に対して、事実を知りもしないのに、ネットやテレビでいちいち批判コメントをする人が多いのにも驚いた。
「同席している力士たちはなぜ止めなかったのか?信じられない」
→その後、白鵬や照ノ富士が止めに入っているとニュース記事
「ビール瓶で殴打なんて、犯罪」
→その後、ビール瓶で殴打はしてないと、白鳳や日馬富士
日馬富士と伊勢ケ浜親方が貴乃花親方へ謝罪に行く報道に関しては「すっぱ抜かれてから謝罪に行くなんて遅い、最低。今まで行ってなかったの!?」
→その後、日馬富士と貴ノ岩はその場で和解、巡業中に会話や握手もしていというニュースも
→親方同士はすでに話をして伊勢ケ浜親方謝罪しているとの報道も
ちょっと思い出すだけで、こんなに浮かぶ。人間てほんと自分勝手だなと思った。自分も気を付けよう。ま、そういうもんなんだろうし、読まなきゃいんだけどね。今回の事件についてはわりと隅から隅まで読んでしまったよ。
●不幸中の幸いか
貴ノ岩の経過は心配であるものの、命に別状がないようで、そのあたりに関しては不幸中の幸いであった。また、ここにきて白鵬による日馬富士と貴ノ岩はその場で和解しているという情報もでてきて、これが本当ならば、手をだしたのはあるまじきことだし、これからどうなっていくのか悲しい気持ちはまだ消えないけどほんのほんの少しだけほっとしたような気も。
ファンなだけに、自分で書いていて、ちょっと日馬富士をかばうような内容ととれなくもない記事になっちゃったような気もするけど…、とにかく色々なことを考えさせられた事件だ。